今回は、さいたま市大宮区で開設以来30年以上、様々な法律相談を取り扱ってきたグリーンリーフ法律事務所が、使用者の観点での、カスタマーハラスメントへの対応についてコメントします。

 カスタマーハラスメントとは 

現時点で、カスタマーハラスメントを定義した法律はありません。

しかし、令和2年厚生労働省告示第5号では、

事業主が他の事業主の雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為に関し行うことが望ましい取組の内容

 として、

「事業主は、取引先等の他の事業主が雇用する労働者又は他の事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為(暴行、脅迫、ひどい暴言、著しく不当な要求等)により、その雇用する労働者が就業環境を害されることのないよう、雇用管理上の配慮として、例えば、⑴及び⑵の取組を行うことが望ましい。

また、⑶のような取組を行うことも、その雇用する労働者が被害を受けることを防止する上で有効と考えられる。…」

として、顧客等からの著しい迷惑行為を、「暴行、脅迫、ひどい暴言、著しく不当な要求等」としています。

また、東京都のカスタマーハラスメント防止条例では、条例第2条第5号で、「カスタマーハラスメント」を、

①顧客等から就業者に対し、

  ②その業務に関して行われる著しい迷惑行為であって、

  ③就業環境を害するものをいう。

と定義し、「著しい迷惑行為」を「暴行、脅迫その他の違法な行為又は正当な理由がない過度な要求、暴言その他の不当な行為をいう。」としています。

使用者は、カスタマーハラスメントに関して何らかの義務を負うか

使用者は、従業員に対して安全配慮義務を負っています。

このカスタマーハラスメントは、従業員の、心身に悪影響を与えるものであることから、使用者は、従業員がカスタマーハラスメント被害に遭わないようにしたり、被害に遭ってしまった場合の対応策を設ける必要があります。

 安全配慮義務違反とは? 

安全配慮義務とは、ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入つた当事者間において、当該法律関係の付随義務として当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上負う義務として一般的に認められるべきものです。

労働者が労務提供のため設置する場所、設備もしくは器具等を使用し又は使用者の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務、と定義されています。

労働契約法でも、このことは規定されています。

(労働者の安全への配慮) 第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

従って、安全配慮義務違反とは、ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において、当事者が負うべき義務に違反することを言います。

安全配慮義務を認めた裁判例

最高裁昭和50年2月25日判決

 最初に安全配慮義務を認めた判例は、自衛隊車両整備工場事件と呼ばれるものです。

「…国の義務は右の給付義務にとどまらず、国は、公務員に対し、国が公務遂行のために設置すべき場所、施設もしくは器具等の設置管理又は公務員が国もしくは上司の指示のもとに遂行する公務の管理にあたつて、公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務(以下「安全配慮義務」という。)を負つているものと解すべきである。もとより、右の安全配慮義務の具体的内容は、公務員の職種、地位及び安全配慮義務が問題となる当該具体的状況等によつて異なるべきものであり、自衛隊員の場合にあつては、更に当該勤務が通常の作業時、訓練時、防衛出動時(自衛隊法七六条)、治安出動時(同法七八条以下)又は災害派遣時(同法八三条)のいずれにおけるものであるか等によつても異なりうべきものである…」

このように判決は述べて、使用者である国は、被用者である公務員に対し、安全配慮義務を負っていることを認めました。

最高裁昭和59年4月10日判決

また、民間企業における安全配慮義務を認めた裁判例は、次のようなものです。

「…使用者は、右の報酬支払義務にとどまらず、労働者が労務提供のため設置する場所、設備もしくは器具等を使用し又は使用者の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務(以下「安全配慮義務」という。)を負つているものと解するのが相当である。もとより、使用者の右の安全配慮義務の具体的内容は、労働者の職種、労務内容、労務提供場所等安全配慮義務が問題となる当該具体的状況等によつて異なるべきものであることはいうまでもない…」

使用者に求められるカスタマーハラスメント対策

東京都条例は、使用者において、次のようなカスタマーハラスメント対策が必要であるとしています。

1  カスタマー・ハラスメント対策の基本方針・基本姿勢の明確化と周知
2  カスタマー・ハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化と周知
3  相談窓口の設置
4  適切な相談対応の実施
5  相談者のプライバシー保護に必要な措置を講じて就業者に周知
6  相談を理由とした不利益な取り扱いを行ってはならない旨を定め周知
7  現場での初期対応の方法や手順の作成
8  内部手続の方法や手順の作成
9  事実確認の正確な確認と事案への対応
10 就業者の安全の確保
11 就業者の精神面及び身体面への配慮
12 就業者への教育・研修等
13 カスタマーハラスメントの再発防止に向けた取組

カスタマーハラスメント対策について、グリーンリーフ法律事務所ができること

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の特徴

開設以来、数多くの使用者側に関する案件・相談に対応してきた弁護士法人グリーンリーフ法律事務所では、労働問題専門チームを設置しています。

使用者側のご相談に関して、自信を持って対応できます。

なお、費用が気になる方は、上記HPもご参照ください。

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■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 野田 泰彦

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