火災保険金請求事件に先立ち、消防署に弁護士会照会をかけ、火災原因等の回答を得た事案

紛争の内容
依頼者であるXは、外出中に自宅が火事になったため、Y保険会社に対し、火災保険金の請求をしました。ところがY保健会社は、Xの故意又は重過失を理由に支払いを拒否しました。
私たちはXから依頼を受け、Yに対し、保険金請求訴訟の提起を検討しましたが、それに先立ち、まずは火災原因を客観的資料とともに特定するため、消防署に対し、火災原因等について弁護士会照会により回答を求めました。

交渉・調停・訴訟などの経過
①まず、消防署に対し、火災原因認定書(火災原因判定書)や実況見分調書(写真、図面)、消防活動報告書などの提出を求めました。
②これに対し消防署からは、「そのような資料を開示することはできない」との回答を受けました。
③そこで、一問一答の質問形式(例えば、「出火箇所はどこですか。」「出火の原因は何と判断されましたか。」など)で、火災原因等について回答を求めました。
④そうしたところ、消防署より、火災原因等について回答を得ることができました。

本事例の結末
消防署から回答を受けた火災原因等について、過去の裁判例等にも照らして調査したところ、依頼者にとって一部不利な内容もあったため、その点について説明をさせていただきました。

本事例に学ぶこと
保険金請求訴訟では、火災原因が何かは重要なポイントになります。
事前に消防署から火災原因について回答を得ることは、今後の訴訟の見通しを立てる上で極めて有用なものとなります。もっとも、そのような消防署からの回答は、当事者では取得困難です。あくまで訴訟提起等を前提としますが、弁護士会照会によって知ることができます。


火災の偶然性が争われ、ほぼ満額の保険金を和解によって取得した事例

事務所兼自宅に隣接する作業所からの出火により、自宅で寝泊まりしていた事務所経営者の取締役配偶者が焼死したために、火災保険金請求及び死亡保険金請求した事案です。
保険契約者である法人代表者が各保険会社に、保険金請求をしましたが、各保険会社は、いずれも、本件火災発生について、焼死した取締役が、何らかの理由で放火した疑いがあるとして、免責事由である本件火災についての故意または重過失ありとして、免責を主張し、支払を拒みました。
相談者は、各保険会社と粘り強く交渉しましたが、らちが明かず、弁護士に依頼し、訴訟を提起しました。
本件のような保険金請求訴訟においては、いわゆる「偶然性」の立証の問題もかかわってくることから、保険事故である火災の発生原因が問題となり、管轄消防署への調査(文書送付嘱託申請)、送付された書類内容についての意見、文書作成者である消防署署員に対する証人尋問、保険会社委託の調査会社作成の調査報告書記載内容に対する意見、焼死した取締役にかかわる親族、配偶者、元従業員に対する証人尋問など行われました。
結果は、裁判所の和解勧告により、いずれの保険会社とも、ほぼ満額で和解することができました。


自動車保険の盗難保険金

Xは、高級外車を所有、盗難保険に加入していたところ、イモビライザーが装着された高級外車が盗難被害にあったことから、保険会社に対し保険金請求をしました。
ところが、保険会社は調査会社の調査結果を理由に支払を拒否したことから、Xが、保険会社を被告として訴訟提起し、約1200万円の保険金の支払を求めました。
Xの自宅の駐車場については、スロープの形状等から積載車を用いて車輌を運び出すことができなかったことから、Xは、イモビライザーが装着されている原告の車輌については、犯人が原告の自宅に侵入し、合い鍵を用いて自走させたと主張しました。
現にXの自宅については侵入者があった形跡があり、かつ、車輌のスペアキーも紛失していました。
これに対し、保険会社は、車輌の被害届が出されていたがスペアキーの被害届は出されてない、住居侵入の被害届も出されていないとして、スペアキーによる盗難事件の可能性はない(換言すれば偽装事案である)と争いました。
このような保険金請求事件の場合、盗難されたということを請求者で証明しなければならないのかについて従来から争いがありましたが、これについては最高裁判所の判決により不要とされたことを受けて、裁判所はスペアキーの紛失の事実等から盗難された可能性があるとの判断をし、その他、Xには過去に盗難保険の受領がないこと、金銭に窮していたというような事実もないこと等を勘案し、Xの保険金請求を認めました。
確かに、盗難されたということまでの立証責任を保険金請求者側は負わないとしても、盗難されたという外形的事実(偽装をするような動機がないというのも考慮される。)の立証責任は保険金請求者にあるため、結局、保険金請求事件については、立証責任の所在により一義的に判断が下されるというよりは、関連事実の総合判断という要素が強いといえます。


保険会社が火災保険金の支払いをしなかったため、訴訟を起こし支払いをしてもらった事例

Aさんは、1人で小さな金属加工の工場を経営していましたが、その工場の一部から出火して、工場は全焼してしまいました。
Aさんは、火災保険金の請求をしたのですが、保険会社は、出火当時、Aさんが工場にいた可能性があること、Aさんには借金があり、経済的に困窮していたことなどを理由に、放火した疑いがあるとして保険金の支払いを拒否しました。
そこで、Aさんは仕方なく、弁護士に委任して保険金請求の訴訟を起こしました。
この訴訟の中で弁護士は、出火当時、Aさんが他の場所で食事をしていたことを証明するために、食事をしたレストランから伝票を取り寄せたり、また、工場の床の隙間にたまった金属の細かい屑から自然発火する可能性があることを証明したりしました。
この訴訟は2年かかりましたが、Aさんの主張が認められ、裁判所は、保険会社に保険金の支払いを命じる判決をしました。
保険会社は、高等裁判所に控訴をしましたが、そこでも結論は同じで、保険会社の不服申立ては棄却されました。
そして、Aさんは保険金全額の支払いと、さらに支払いが遅れたことによる年5%の割合による損害金の支払いを受けることができました。
火災保険金の支払いが拒否される理由は、多くの場合、放火の疑いがあるということなのですが、実際に放火をしていないのなら、訴訟をしてでも争うことが大切だと思います。


何者かによって自宅が放火されて全焼したところ、保険会社が保険金の支払いを拒んだため、訴訟を提起して650万円の保険金を回収した事例

紛争の内容
依頼者は購入した建物を何者かに放火をされて全焼しました。火災保険に加入していたため、保険会社に火災保険金を請求したのですが、保険会社は依頼者が第三者と共謀して自宅を放火したと主張して支払いを拒みました。そこで、当事務所にご相談を頂き、訴訟のご依頼を頂きました。

交渉・調停・訴訟などの経過
依頼者は、火災現場となる建物内に灯油ポリタンクとペンキ缶を置いていました。そして、建物の激しく燃焼していた箇所からは、ペンキに含まれる成分が検出されました。さらに、建物は、玄関ドアと全ての窓が施錠され、雨戸のある窓は雨戸まで閉められていました。これらの事実を挙げて、保険会社は、依頼者が第三者に玄関ドアの鍵を渡して、建物内においてあるペンキを用いて放火をさせた、と主張しました。また、併せて、保険会社は、依頼者が消防の現場検証で検出のされやすい灯油の使用を避け、ペンキを使用したと主張しました。
 これに対して、当方は、「依頼者が灯油を建物内に置いたのは、暖房のために灯油を使用するからである。また、依頼者がペンキを購入して建物内に置いたのは、建物のリフォームのためである。そして、建物は築40年以上の物件で、玄関ドアの鍵も古く、ピッキングによる開錠が可能である。さらに、依頼者は雨戸まで締めて自宅を不在にしたのであるから、留守宅を侵入盗に狙われて、建物内に金品が置かれていなかったことの腹いせに放火された可能性がある。加えて、保険会社は依頼者が検出のされやすい灯油の使用を避けてペンキを使用したと主張するが、依頼者は火災の後の保険会社からの事情聴取において、家にペンキを置いていたと回答しており、仮に助燃材としてのペンキの使用を隠そうとしたのであれば、家にペンキを置いていたと回答をするはずはないから、依頼者は保険会社の主張するような犯人ではない」と反論しました。

本事例の結末
裁判官から和解勧告があり、建物とその中に置いてあった物の購入代金に相当する額の保険金、及び、保険金の支払いが遅れたことの遅延損害金として、600万円を保険会社が支払うという和解案が提示されました。当方は、この和解案をそのまま了承することができなかったため、裁判官と保険会社に対し、増額を要求したところ、650万円での和解が成立しました。

本事例に学ぶこと
第三者がピッキングによって侵入し、建物内にあった可燃物を使用して放火したという可能性が、あり得なくは無いという主張を行い、この主張が裁判に提出された証拠と矛盾するという保険会社の様々な主張を想定しながら、訴訟を進めていきました。なお、侵入盗が建物内にあった可燃物を使用して放火をするという事件は、過去にも同様の裁判例がありましたので、これを引用し、本件でもそのような放火の態様があり得なくは無いことを主張しました。


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