仮差押と銀行取引の一時停止

A社はB社に対して、300万円の売掛金を持っていましたが、再三にわたる請求にもかかわらず、B社はその売掛金を払おうとしませんでした。B社は、A社から買った製品に欠陥があったから支払わないというのですが、A社にしてみれば、その主張は言いがかりとしか思えません。
このような場合、B社の財産を仮差押することを、まず考える必要があります。
仮差押とは、このケースで言えば、売掛金請求の訴訟をする前に、B社の財産を仮に差押えて、その財産を譲渡したり、隠したりすることができないようにする手続を言います。訴訟をする前に、相手の財産を差押さえるのですから、保証金というお金を法務局に供託しなければなりません(ただ、この保証金は、ほとんどの場合、訴訟が終わるなどして決着がつけば返ってきます)。
また、仮差押をする財産には、不動産、預貯金、動産などが考えられます。
B社の場合、不動産は持っておらず、また、動産と言っても机や椅子などしかなかったので、A社は、B社のC銀行に対する預金を仮差押することにしました。
通常、保証金は請求額20%程度なのですが、預貯金を仮差押えする場合は30%程度が普通です。
A社は、300万円の30%である90万円を法務局に供託し、裁判所での手続を経て、B社の預金を仮差押しました。
これで、B社は預金を下ろせなくなります。これが仮差押の本来の効果ですが、預貯金の仮差押の場合、銀行は、仮差押の申立が取り下げられるか、仮差押決定が取消されるまで、新規の融資をストップするのが通常です。
今回のケースでも、C銀行が、B社に対する新規の融資をしなくなったため、資金繰りに困ったB社は、A社に対して300万円を分割で支払うことを申し入れ、A社は無事、売掛金を回収することができました。
銀行から融資を受けて事業を行っているような会社の場合は、銀行預金の仮差押をすることは効果的な手段と言ってよいでしょう。


銀行預金、工事代金などの差押え(強制執行)

Xは工事下請業者であり、元請業者であるYに対し、工事代金の支払を求めましたが、Yは、発注元からまだ工事代金を受け取っていないなどといって支払を拒否しました。
そこで、XはYに対し、工事代金の支払を求める訴訟を提起し、勝訴判決を得ましたが、それでもYが支払をしていないため、勝訴判決に基づき強制執行手続をとることにしました。
Xは、Yの発注元を調べたり、工事現場等を調査しましたが、Yは、現在、工事を受注しているのか、完工済の現場があるかどうか判明しませんでした。
そこで、Xは、Yの銀行口座を差押えすることにしましたが、いわゆるメインバンクについての情報がなかったことから、Yの本社所在地近隣、Yの代表者自宅周辺の金融機関の支店(合計7箇所)に対し、銀行口座の差押えを実施しました。
銀行口座の差押えの結果、複数金融機関の支店の銀行口座について差押えができましたが、残高はわずかしかなく、満足のいく結果を得られませんでした。
銀行口座の差押えの場合、差押えができたとしても、差押え時の残高のみの差押えができるにすぎず、残高が僅少であれば、効果は薄くなってしまいます。
判決に基づき強制執行をするには、取引先等の売掛金等の差押えをするのが効果的であり、銀行口座の差押えについては確実な情報がある場合を除き、差押えが功を奏しない可能性が高いのではないかと思います。
なお、本件では、Yの代表者個人に対して支払を求めることができませんでしたが、仮に工事代金等の支払について代表者が連帯保証をしていた場合には、代表者の自宅等の差押えも可能となります。
したがって、このような事案では、事後に相手方の取引先を調査するだけでなく、事前に代表者の連帯保証を依頼しておくことも効果的と思われます。


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