
生活保護は、自分の財産がすべて無くなってから受給することができる最後の手段と言えます(例外もあります)。また、生活保護費から借金の返済はしてはいけません。
例えば、親から相続した家があった場合は、生活保護をすぐに受給できません。原則としては相続した家を売却してお金に換えて生活費に充て、生活費が枯渇したらようやく受給できます。ただ例外もあって、そこに住んでいる、資産価値が低い、また転居が難しい事情がある(病気など)等の場合は、住宅扶助はでませんが生活保護を受給できる場合もあるようです。
数年前に自己破産を受任したAさんは生活保護を受給していました。
Aさんは病気で仕事ができなくなり、生活費と借金の返済ができずに法テラスで破産の相談をしました。生活保護を受給していたので法テラスですぐに弁護士に受任してもらえましたが、受任後に、半年前に処分した不動産の持分があったことがわかりました。
Aさんは資産として母親から3年前に相続した不動産(妹と半分ずつ相続)がありました。Aさんの両親はAさんが小学生の頃に離婚してAさんは父親に引き取られ、妹は母と一緒に家を出ていきました。相続した不動産は、Aさんが幼いときに何度か訪れたことがあったようですが、全く覚えていませんでした。古い母屋が建っているだけの田舎のお家です。Aさんの妹は両親が離婚後、母と一緒にこの母屋に住んでいたようです。
Aさんは1年ほど前から病気で思うように働けなくなり、働いていたころからの借り入れの返済もあって、生活費と返済のために、さらに借り入れを重ねてしまったと言います。
半年前には完全に職を失い、自転車操業を続けていましたが、これ以上返済を続けることは困難と思い、Aさんは生きるために生活保護を申請しました。
生活保護の審査の際に、母から相続した不動産の持分を処分しないと保護費は出せないと市の担当者に言われました。Aさんは妹に相談をしましたが妹からは、お金がないから持分を買い取ることもできないし、贈与されても贈与税が払えない、売却にも応じられないと断られました。困ったAさんは離れて暮らす父に相談して了承してもらい、不動産の持分を父に贈与することにしました。
無事に生活保護を受給することができたAさんでしたが、今度は破産申立の際に父に贈与した不動産持分について、管財人が選任されて調査されることになるだろうことを弁護士から説明をしました。現在、管財人の引継ぎ予納金20万円は法テラスから出してもらうことができます。ただ、Aさんからは「この不動産の持分について裁判所に黙っていてもらうことはできませんか」、「管財人から父に連絡が行くのは困る、父に知られたくないし、これ以上迷惑をかけたくない」等と言われ、弁護士は「知った以上、それはできない」とお断りをすると、Aさんと連絡をとれなくなりました。結局、Aさんの破産事件は辞任して終了しています。
ご依頼者がやむを得ない事情で受任直前に資産を処分していることはよくあります。
本件の場合、やむを得ない事情ですし、管財人が選任されても不動産の調査だけで、財団から放棄して終了する可能性の高い事件だったと思います。
ただ、不動産を贈与されたお父様には、管財人から連絡が行くことは想定しておく必要があります。お父様に知られないようにする、とは約束することができませんでした。
もう少し時間をかけて説明・説得ができたらよかったと思った事件です。





