解雇が有効と判断されそうな事案で、労働審判により和解によって解決した事例

労働審判という新しい制度ができて、数年が経ちます。
当事務所でも、簡易・迅速な労働紛争の解決手段として、労働審判を利用することが多くなっています。
ある労働者の方から、不当に解雇されたというご相談を受けました。その方の話に依れば、起こしてしまった事故を、その結果以上に過大に評価してその事故を理由に解雇を告げられた、と言うことでした。そこで、その様な事故を起こしたと言うことを前提に、解雇無効・賃金支払いの労働審判を申し立てました。
労働審判は、3回の審理で結論を出すことになっています。そのため、第一回の期日には、十分な打ち合わせと陳述書や証拠などの資料を揃えて臨む必要があります。他方、相手の会社も、同じように、十分に証拠を揃えて臨んできます。
本件の場合、第一回に臨んだ際に会社側から、当初聞いていたよりも大きな事故であるようにも思える証拠が提出されました。また、その他に、従業員に問題行動があるかのように見える証拠も提出されました。
これらを見ると、若干ですが、労働者に不利な結論となりかねない内容でした。すなわち、解雇が有効であると判断されかねない状況に追い込まれてしまったのです。
解雇が有効ということになってしまえば、職場復帰どころか、その間の給与相当額の支払いを求めることができなくなってします。
そこで、依頼者の人と急遽打ち合わせ(労働審判の場合には、期日にはきてもらうことになっています)、依頼者の方は既にその会社を去る覚悟を固めていたこともあって、解決金(和解金)を受領することで、職場復帰等は求めない、と言う内容での和解を提案しました。会社側は最後まで解雇の有効性を主張していましたが、何とか、この和解に応じて来ました。
このように、労働審判では柔軟な解決が可能ですが、他方、迅速に行動しないと、会社側が正面から争い、解決金という和解も不可能であった可能性があります。労働審判では、期日には必ず来ていただき、方針をすぐに決められるようにしていただきたいと思います。


労働審判により、未払い賃金、慰謝料などの請求額の8割の支払いを受けた事例

勤務歴5年の労働者が、業務上の負傷により休職したものの、怪我の回復経過を見ながら復職の話をメール等でやりとりしていました。しかし、その後、会社に突然呼び出され、復職の話を反故にされ、退職勧奨を受けました。
労働者に退職の意向は無く、退職届等も出していないにもかかわらず、会社側から執拗な勧奨が続き、一方的に退職扱いとされた上、離職票等の書類が渡され、退職金名目での金員を一方的に振り込まれるなどしました(40万円)。
そこで、退職の事実は無いことを前提に、未払いの賃金及び慰謝料の支払い(合計200万円程度)を求める労働審判を申立てました。
労働審判委員会より、解決金として請求金額の8割程度を支払う和解案が提示され、和解に至りました。一方的に振り込まれた金員についても、返還しなくてよいとのことになったので、依頼者としては、金銭的には満足のいく結果となり、新たな就職先を見つけて再就職に踏み出すことができました。


未払い賃金や慰謝料について、和解をして、請求額の6割を取得した事例

勤務開始後4カ月経過した時点で、労働者の能力不足や使用者の指導に適切に従えないということを主な理由として、「クビだ。もう来るな」と即日解雇を言い渡されました。その際に、半ば強引に、解雇承諾書と称する書面に署名をさせられました。
労働者は、適切な指導自体そもそも受けておらず、能力不足は無いとの認識でしたが、会社の態度は強硬で、会社には出勤できなくなりました。その後、労働者は、1か月ほどで新たな就職先を見つけて、再就職しました。
落ち着いた段階で、当事務所に法律相談に来られました。そこで、労働者の依頼を受け、再就職するまで間の未払い賃金や慰謝料の支払い(合計120万円程度)を求める労働審判を申立てました。
  
労働審判委員会から、請求金額の6割程度の金額での和解提案があり、和解が成立しました。勤務期間が短かったことや再就職が早期に決まったことなどから、慰謝料額については、さほど期待できないと見込んでいましたが、解雇を言い渡す際の状況や解雇理由の不透明さをある程度考慮してもらい、依頼者の満足のいく解決ができました。


元従業員からの不当訴訟


労働者派遣を事業とするA社(依頼者)は、女性従業員B(相手方)が派遣先C社で遅刻や無断欠席をくり返すことに頭を悩ませていました。その後、Bは、「病気にかかった」として1ヶ月の休職となりましたが、この休職期間を過ぎてもC社に出勤しなくなってしまいました。

A社はBに対し、A社に出社するように促しましたが、Bは、突然A社に対し「違法無効な解雇をされた」として未払賃金や慰謝料を求める損害賠償請求訴訟を提起しました。

A社は、Bを解雇したことはなく、Bは一方的にA社に出社しなくなったとして、AB間のメールでのやり取りや、派遣先C社からの陳述書を提出し、「A社がBに対し賃金を支払っていないのは、ノーワークノーペイの原則から当然のことである」と反論しました。

BはA社の出した主張、証拠を踏まえ、「訴えを取り下げたい」と提案してきました。しかし、訴えの取り下げに同意した場合、再度同様の訴えを起こされる可能性もあります。そこで、Bにはこのような再度の訴訟提起をしない旨の誓約をしてもらった上で、A社は訴え取り下げに同意しました。

結果として、A社はBからの請求を完全に退けることに成功し、事件解決となりました。


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