応用美術について

Xは、自社で製造販売したデザインTシャツについて、著作権が認められるとして、模倣品を販売した被告に対し、著作権侵害を理由として損害賠償を求めました。
これに対し、Yは、原則として実用品に使用され、産業上利用されることを目的として作成される応用美術は、著作物から除外され、意匠法等の保護に委ねられていると反論しました。
これに対し、原告は、応用美術でも、純粋美術と同視できる程度に美術鑑賞の対象とされるようなものは、美術の著作物として著作権の対象になると再反論しました。
応用美術とは主として実用品のことをさし、実用品の模倣を禁止する法律として意匠法があります。たとえば、日用雑貨や衣類、電化製品、自動車などは、著作物とはされていません。
しかしながら、応用美術のうち、美術工芸品については例外的に、美術の著作物(著作権法10条1項4号)として著作権法により保護されることになります(同法2条2項)。
この点、Tシャツの絵柄について、純粋美術と同視しうるほどのTシャツの絵柄を無断で模倣した行為が、著作権侵害に当たるかが争われた事件で、Tシャツの絵柄であっても純粋美術と同視しうる場合は著作権で保護される判断された裁判例がありますが、本件では、純粋美術と同視ることはできないとして、裁判所は原告の請求は認めませんでした。
この点、裁判所の純粋美術と同視できるどうかの基準については、製作意図や量産品なのか否かだけでなく、総合的に判断されているのが実情であり(実用品を題材とした芸術品が現代美術において否定されるものではないと考えられます)、基準としては個別の判断とならざるを得ない部分があります。
したがって、実用品、大量生産品だからといって、すぐに著作物としての保護が与えられないというものではありません。
他方、裁判例の基準は個別具体的な要素により左右されるため、応用美術についての保護が必要な場合、まず、意匠登録可能なものは意匠権による保護を求めるべきと考えられます。


商標使用と意匠との限界(商標の装飾的使用)

Xは、「○○○○(著名なキャラクター)」という文字(著名なキャラクターのイラスト付き)について商標登録をした商標権者であったところ、Yは、「○○○○」を胸部全体に大きく○○○○のイラストとともに○○○○の文字を一体的にあしらったTシャツを販売しました。そこで、原告は、被告に対し、○○○○の商標権に基づきTシャツの製造販売等の禁止を求めました。
Xは、イラストとともに○○○○の文字がTシャツの胸部全体にTシャツのデザインとして装飾的に使用されていたとしても、他の商品との違いを示す「目印」(自他商品識別機能という意味)として○○○○という文字とそのイラストが使用されている以上、YのTシャツは原告の商標権を侵害すると主張しました。
これに対し、Yは、○○○○を「目印」としてではなく、○○○○の文字とイラストをデザインとして(楽しい感じ、かわいい感じを演出して購買意欲を喚起させるため)、装飾的に使用しているのであって、商標権の侵害は認められないと主張しました。
裁判所は、○○○○という文字についてはイラスト(図形部分)に付随した説明的附記であり、この文字部分だけ分離して商標権侵害の成否を判断するのは不自然であるとし、イラスト部分と一体的に商標権侵害の成否を判断すれば、デザインとして装飾的に○○○○が使用されているのは明かであるとして、Xの商標権侵害の主張を排斥しました。
このような場合、基本的に○○○○という文字が使用されていれば、自他商品識別機能を有する商標権としての○○○○を侵害していると考えられますが、これがイラスト等と一体となっていた場合は、本件のように微妙な判断となり得ます。また、それがワンポイントマークとして利用されていたような場合は、逆に「目印」として利用されていると判断される可能性もあり、商標の装飾的使用については、個別事案によって限界が異なるということになるのではないかと考えられます。


著作権が譲渡されていると認められた事例

Aさんは写真家ですが、B社から依頼されて、全国の桜の写真を3000枚ほど撮り、その写真のネガをすべてB社に渡しました。B社はそのうちの200枚を使って、桜をテーマにしたパンフレットを作成しました。
B社は、このパンフレットを、他の会社に売却しています。
その後、ほどなくしてAさんが亡くなってしまい、Aさんの相続人である妻Cさんは、B社に対して、3000枚の写真のネガの返還を求めました。
B社がこれを拒否したために、CさんはB社を相手にして、写真のネガの返還を求める訴訟を起こしました。
争点になったのは、3000枚の写真のもともとの著作権者であるAさんが、B社に著作権を譲渡したかどうかということでした(譲渡していないのなら、Aさんの相続人であるCさんが勝訴し、譲渡しているのならB社が勝訴することになります)。
裁判所は、次に述べる理由から、B社がAさんに本件の写真撮影を依頼した時点で、将来撮影される本件写真の著作権は、AさんからB社に譲渡される旨の合意が、B社とAさんとの間で成立していたとして、Cさんの請求を棄却しました。
① B社がパンフレットを作成するために使った費用(Aさんに対する支払いを含む)は、パンフレットを売却した売却代金よりも大きく、B社は、このパンフレットの作成に関しては赤字になっている。
赤字になるためにわざわざAさんに写真撮影を依頼することはない。B社がAさんに写真撮影を依頼したのは、このパンフレットのためだけなく、Aさんの撮影した3000枚の写真の著作権がB社に譲渡され、後々、B社が3000枚の写真を使用できるからである。
② Aさんのフィルム代、宿泊代、交通費は、すべてB社が負担している。
③ Aさんの撮影旅行が終わった段階で、B社の従業員が撮影済みのフィルムを預かり、フィルムの現像を行っている。
その後も、B社がフィルムを保管していたが、Aさんからフィルムの返還を求められたことはなかった。
④ パンフレットに使ったのは、3000枚のうち200枚である。Aさんが、自分が3000枚の写真の著作権を有していると考えていたなら、この200枚のネガだけを渡せばよく、残りの2800枚についてネガを渡すことはないはずである。

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