近年、通勤や買い物の際に、自転車を利用するようになったという方も多いのではないでしょうか。
今回は、自転車に乗っているときの交通事故における過失割合について、具体的な事例を挙げながら解説します。

1 自転車の人気の上昇

近年、自転車の有用性が見直されてきています。

もっとも大きな要因は、2020年頃から始まった新型コロナウイルスの感染拡大ではないでしょうか。
通勤電車等の「密」を避けるため、自転車で通勤するという方もいらっしゃるかと思います。

また、2022年のロシアによるウクライナ侵攻によってガソリン価格等が高騰しています。
節約のために、自転車を利用されるようになった方もいるかもしれません。

自転車は、自動車と異なり、免許が必要ありません。
したがって、子どもや高齢者を含め、多くの方が気軽に利用しています。
もっとも、自転車で移動する際には、事故に遭ってしまうことも十分に考えられます。

2 自転車に乗っているときの事故の特徴

自転車に乗っているときの事故としては、以下のようなケースがあります。
・自転車に乗っているときに、自動車と接触し、足やひざをひねってしまう。
・衝突事故で転倒したことが原因で、腰や背中を地面に打ちつける。

四輪車に乗っているときの事故であれば、車体がある程度衝撃から守ってくれます。

一方で、自転車に乗っているときの事故では、身体を守ってくれる物がありません。したがって、衝撃を直接的に受けることになります(歩行者やバイクの事故でも同じことが言えます。)。
そのため、事故の態様によっては、大きな怪我をしてしまう可能性もあります。

3 交通事故における過失割合とは

過失割合とは、事故態様について被害者側にも落ち度がある場合には、損害を公平に分担するという観点から、落ち度の程度に応じて被害者と加害者の間の過失の割合を決め、それぞれ過失分を損害賠償額から控除するというものです。

例えば、交通事故によって自分の自転車が損傷し、5万円の修理費が生じたとします(なお、自転車の時価は5万円を超えているものとします。)。
この事故において、自分と相手方の過失割合が20:80となった場合には、相手方に賠償を請求できる修理費は、
5万円×80%(相手の過失割合)=4万円
ということになります。

この過失割合を決める際には、「別冊判例タイムズ38号」という書籍を参考にすることが多いです。
こちらは東京地裁民事交通訴訟研究会編著の書籍であり、事故の状況の類型ごとに、過失割合の目安が示されています。

4 自転車と自動車の事故における過失割合の事例

⑴ 信号機のある交差点内において、直進する自転車と自動車が出会い頭で衝突した事故

自転車に乗っているときに、交差点を直進して進入しようとしたところ、右方や左方から直進してきた自動車と出会い頭で衝突したというケースです。

このような場合において、
自転車:信号が青で直進
自動車:信号が赤で直進
という場合には、自動車は信号無視をしていますので、自転車と自動車の過失割合は、基本的には100:0となります。

逆に、
自転車:信号が赤で直進
自動車:信号が青で直進
という場合には、自転車と自動車の過失割合は、基本的には80:20となります。

⑵ 信号のない交差点内において、直進する自転車と自動車が出会い頭で衝突した事故

⑴との違いは、信号が無いという点になります。
このようなケースでは、道幅や一時停止の規制、優先道路、一方通行に違反する運転などの点がポイントになります。

例えば、
自転車:明らかに広い道路を直進
自動車:明らかに狭い道路を直進
という場合の、交差点内での出合い頭の事故では、自転車と自動車の過失割合は10:90が基本となります。

一方で、
自転車:明らかに狭い道路を直進
自動車:明らかに広い道路を直進
という場合の、交差点内での出合い頭の事故では、自転車と自動車の過失割合は30:70が基本となります。

⑶ 信号のある交差点内において、相対する直進車と右折車と衝突した事故

信号のある交差点内において、自転車・自動車が相対する(相手方が前方から向かってくる)形でともに青信号で交差点に進入した際の事故と仮定します。

このとき、
自転車:交差点内を直進
自動車:交差点内で右折
というケースで正面から衝突した場合には、自転車と自動車の過失割合は10:90が基本となります。

一方、
自転車:交差点内を右折
自動車:交差点内で直進
というケースで正面から衝突した場合には、自転車と自動車の過失割合は50:50が基本となります。

⑷ 交差点内において、自転車が同一方向を走行していた左折車に衝突された事故

交差点内において、自転車が直進しようとしていたところ、同じ方向から左折しようとした自動車に巻き込まれる形で衝突した事故と仮定します。

このとき、交差点の手前30メートルの地点で、自転車よりも自動車の方が前を走行していた場合には、自転車と自動車の過失割合は10:90が基本となります。

一方で、交差点の手前30メートルの地点で、自転車よりも自動車は後ろを走行していたところ、自転車を追い越して左折したような場合には、自転車と自動車の過失割合は0:100が基本となります。

5 【まとめ】交通事故の過失割合に疑問がある際は、ぜひ弁護士へ相談を

上記の過失割合は、ごく一部の例にすぎません。
実際にはさまざまな事故態様に応じた基本の過失割合が定められています。
さらに、基本の過失割合は、運転者の重過失などの要素に応じて修正されます。

このように、過失割合は専門的な知識が必要になってきます。
また、過失割合を決める前提として、証拠の収集等も重要になってきます。
特に、治療が終わっても後遺障害が残ってしまい、等級が認定されたような場合には、慰謝料などの金額が大きくなります。
そのため、交渉によって少し過失割合が変更されるだけでも、受け取ることができる賠償金の金額は大きく変わってきます。

最近は、自転車保険にも弁護士費用特約が付帯されていることも多いです。
加入している自動車保険や自宅の火災保険の弁護士費用が使える場合もありますので、確認されることをおすすめします。
弁護士費用特約があれば、弁護士費用は基本的に任意保険の保険会社に負担してもらえますので、ご自身の費用負担が無くても、弁護士に依頼することも可能です。

弁護士に依頼すると、
・保険会社との対応を任せることができる
・示談のときに自賠責基準や任意保険基準ではなく裁判所の基準で示談金の交渉ができる
・保険会社の提示に納得できなければ裁判などによる解決も検討することができる
などのメリットが多くあります。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 赤木 誠治
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