労災事故は、近年増加傾向にあり、埼玉県では、令和元年に休業4日以上を要する死傷者数は6237人にもなり、死亡者数は、33名との統計がでています。特に死亡事故は、様々な業種で起きており、それに伴う当事務所への法律相談も増加しております。今回は、労災による死亡事故に関してよくある相談について、まとめてみましたのでご覧いただければ幸いです。

労災事故で死亡した場合の労災保険給付額

ご家族が労働災害事故で亡くなった場合、どのような補償があるのでしょうか。
労災保険からは、遺族補償給付及び葬祭給付を受けることができます。

遺族補償給付として支給されるもの

労働者が業務上の事由又は通勤により死亡した場合にその遺族に支給されます。
遺族(補償)給付には、遺族(補償)年金と遺族(補償)一時金とがあります。

遺族補償年金

1 誰が受けられるか?
労働者の死亡当時その者の収入によって生計を維持していた配偶者、子、父母孫、祖父母、兄弟姉妹の遺族が受給資格者となります。

この受給資格者のうちの最先順位者(受給権者)に年金が支給されることになります。
なお、受給権者が死亡や再婚、年齢超過などで受給権を失うと、その次の順位の者が新たに受給権者となります(転給)。

■順位■
① 配偶者
② 被災労働者の死亡当時、その収入によって生計を維持していた子・父母・孫・祖父母
③ その他の子・父母・孫・祖父母
④ 兄弟姉妹

2 請求するためには
遺族(補償)年金を請求するためには、
・業務災害の場合は、「遺族補償年金支給請求書」(様式12号)
・通勤災害の場合は、「遺族年金支給請求書」(様式16号の8)に所要の書類を等添えて、所轄労働基準監督署に提出して申請することになります。

支給額は、労働者の生前の賃金によって変わります。

労働基準法上の平均賃金(労災事故日の直前3か月間に支払われていた賃金総額を日割りした金額。ボーナスは除く)を「給付基礎日額」と呼びます。これが基準となります。

また、遺族の数(受給権者および受給権者と生計を同じくしている受給資格者の数)に応じて金額が変わります。

これを表にまとめました。

遺族数 年金額
1人 年金給付基礎日額の153日分
55歳以上の妻又は
厚生労働省令で定める障害の状態にある妻
年金給付基礎日額の175日分
2人 年金給付基礎日額の201日分
3人 年金給付基礎日額の223日分
4人以上 年金給付基礎日額の245日分

遺族補償一時金

労働者の死亡当時遺族(補償)年金の受給資格者がいないときには給付基礎日額の1,000日分が支給されます。
受給資格のない遺族のうち最先順位者に支給されます。
遺族(補償)一時金を請求するためには、
・業務災害の場合は、「遺族補償一時金支給請求書」(様式15号)
・通勤災害の場合は、「遺族一時金支給請求書」(様式16号の9)
に所要の書類を添えて、所轄労働基準監督署へ提出することになります

遺族特別支給金

これは、遺族の数にかかわらず一律に300万円が支給されます。
遺族特別支給金は、労働者の死亡当時の最先順位の遺族(補償)年金の受給権者または労働者の死亡当時に遺族補償年金の受給権者がない時に支給される遺族補償一時金の受給権者に支給されます。なお、遺族特別支給金の支給を受けることができる遺族が2人以上の場合には、300万円をその人数で割った額となります。
特別支給金の支給は、労働者災害補償保険法29条に基づき「社会復帰促進等事業」としておこなわれるものです。色々な支給があり、非常にわかりづらいですが、労災保険とは少し趣旨が異なる支給金です。

遺族(補償)年金前払一時金

労働者の死亡直後において一時的な出費を必要とする場合は、遺族(補償)年金受給者の請求に基づいて、年金給付基礎日額の1,000日分の額の範囲以内で定めてある一定額をまとめて前払で受けられます。 ただし、その場合前払一時金の額に達するまでの間、年金は支給停止されます。
遺族(補償)年金前払一時金を請求するためには、「遺族(補償)年金前払一時金請求書」(年金申請様式1号)に所要事項を記入し、所轄労働基準監督署へ提出することになります。

本来、年に受ける金額が決まっていますが、緊急の場合にまとめて前払いを受けられるということになります。

葬祭料(葬祭)給付

死亡された労働者の葬祭(葬儀)を行う者に支給されます。
葬祭料(葬祭給付)を請求するためには、

・業務災害の場合は、「葬祭料請求書」(様式16号)
・通勤災害の場合は、「葬祭給付請求書」(様式16号の10)に所要事項を記入し、所轄労働基準監督署へ提出することになります。

葬祭料(葬祭給付)
=315,000円+給付基礎日数の30日分
または
=給付基礎日額の60日分
のいずれか高い方が支給されます。

※葬祭料(葬祭給付)は、被災労働者の死亡日翌日から2年経過すると時効により請求できなくなりますのでご注意ください。

労災で死亡した場合の会社(事業者)への損害賠償について

労災保険では、上に述べたとおり、一部の給付がなされますが、死亡された方の損害の全てを満たしてくれるものではありません。
そこで、事案によっては、労災保険による給付とは別に、加害者や会社に対して、損害賠償請求を検討する必要が生じます。

では、どのような費用が請求できるのでしょうか。

労災保険とは別に請求することのできる可能性のある費目としては、精神的苦痛に対する慰謝料(入院慰謝料・通院慰謝料)、後遺障害に対する慰謝料(後遺障害慰謝料)、死亡に対する慰謝料(死亡慰謝料)などがあります。

慰謝料は、労災保険による給付では支払らわれません。

さらに、逸失利益(後遺障害により喪失してしまった労働能力に応じ、得られなくなってしまった利益)、休業損害についても、実は、労災給付としては、そのごく一部しか支払われません。

会社に対して損害賠償請求をするとは何か

労災事故が起きた場合は、加害者(がいれば)に対する不法行為に基づく損害賠償請求、または会社に対する安全配慮義務違反又は使用者責任に基づく損害賠償請求を検討します。

安全配慮義務違反とは、労働契約によって、会社は労働者に対して、労働者がその生命・身体などの安全を確保しつつ労働することができるように必要な配慮をする義務を負っています(労働契約法5条)。これは、平成20年に、はっきりと明文化された義務です。

会社がこの安全配慮義務を怠った結果、事故があり、労働者が死亡した場合は、会社は労働者に対して、安全配慮義務違反に基づく債務不履行責任(民法415条)を負うことになります。安全配慮義務違反で、使用者に多額の損害賠償を命じる判例が多数存在します。

当事務所による解決事例はこちら

https://www.g-rosai.jp/category/zirei/

会社に請求する手続としては、示談交渉、労働審判、訴訟などがあります。
どのような手段を用いるべきかは、弁護士とよく打合せをして決めていくのがベストでしょう。まずはご相談されることをお勧めいたします。

最後に

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グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。

■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 申 景秀
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