夫と離婚したいという意思は強いものの、これまで専業主婦という形を続けてきた手前、離婚後の生活の基盤となる財産を分与してもらえるかの不安が大きいとして離婚に踏み切れないというパターンは多く存在します。

以下では専業主婦が離婚する場合の財産分与の考え方について解説していきます。

財産分与とは何か?

財産分与とは、夫婦が婚姻に基づき共同生活を送る中で形成された財産を、離婚時にそれぞれに分配する制度です。
いつの時点の財産を分けるか(財産分与の基準時)については離婚時もしくは別居時のいずれか早い時点とされることが多く、不動産、預金、自動車、株式、保険等あらゆる財産が分与の対象となります。
分与の割合は基本的に夫婦それぞれ2分の1と考えられています。

そもそも専業主婦は財産分与を受けられるか?

専業主婦家庭では、基本的に、夫が働きに出て収入を得、妻は家で家事等を行うという役割分担がされます。
その場合、収入を得ているのは専ら夫であるため、妻は家庭の財産形成に関与していないとも考えられ、そうなると、妻は財産分与を受けられないという結論もあり得そうです。

しかし、法的にはそのような考え方はしません。
妻が専業主婦の状態で収入を得ていない場合であっても、家で家事を行ったり、子どもを育てる等していることで夫が仕事に集中できる状態が作り出されているという観点から夫婦の財産形成に貢献しているとの評価がされます。
そのため、妻が専業主婦の場合でも離婚時に財産分与を受けることができます。

専業主婦の財産分与の割合はどうなるか?

これは専業主婦の妻の財産形成への貢献をどの程度の割合で認めるかという問題です。
以前は、裁判例においても専業主婦の財産形成への貢献の割合を2分の1以下と判断するケースが多くありましたが、現在は、専業主婦の財産形成への貢献の割合は基本的に2分の1と判断されています。
裁判所は、専業主婦家庭において、働きに出ている夫と専業主婦の妻の財産形成への貢献割合を同等と考えているということになり、専業主婦の財産分与の割合は基本的に2分の1となります。

専業主婦の財産分与の割合が変更される場合があるか?

専業主婦の財産分与の割合が基本的に2分の1であることは既に述べたとおりではありますが、すべてのケースで2分の1の割合が維持されるわけではありません。
例えば、夫が経営者や医師などの高給取りの場合、その収入は夫自身の能力によるところが大きいとして専業主婦の財産分与の割合が減らされる可能性があります。
また、夫から専業主婦であるにもかかわらず主婦業を放棄して遊び歩いていた、その間は夫が主婦業もこなしていた等の主張・立証がなされた場合にも財産分与の割合が減らされる可能性があります。

財産分与に備え準備しておくべきことはあるか?

財産分与は夫婦共同生活において形成された財産を離婚時にそれぞれに分け与えるものですので、そもそも婚姻期間中にどのような財産が形成されたかを把握することが出発点となります。
また、財産分与を請求する場合には、請求をする側が分けるべき夫婦共有財産の存在を示す必要があるとされていますので、財産関係の把握をしておくことが重要です。

家計管理を専業主婦である妻が行っているという場合には、夫のおおよその財産は把握できているものと思いますので、あまり心配はないのですが、家計管理を夫が行っており妻には必要な生活費だけを渡すというスタイルを取っている場合には、夫の財産がどのような形で存在するかを確認しておく必要があります。

給与口座以外の預金口座、貯蓄型の保険、財形貯蓄、株式投資等は判明しにくい場合もありますので、離婚を切り出す以前の段階で、銀行等から送られてくる契約内容の案内通知等には目を光らせておく必要があります。

離婚を切り出した後は夫も財産分与を警戒して情報を隠そうとする傾向にありますので、財産関係の把握は離婚を切り出す前にしておくべきです。

財産分与の対象となる各財産の評価はどのように考えるか?

各財産の評価はいつの時点の財産を分けるかという基準時を前提に行います。
具体的な財産の評価方法は以下のとおりです。
現金・預金は基準時点の残高
保険は基準時点の解約返戻金額
不動産は基準時点のローン残高と現在時点の査定額の差額
自動車は基準時点のローン残高と現在時点の査定額の差額
株式は基準時点の数量に現在時点の株価を乗じた金額
退職金は基準時点で自己都合退職した場合の金額を勤続年数と婚姻期間で按分した金額(定年退職が間近い場合には退職金満額を勤続年数と婚姻期間で按分した金額)

子ども名義の財産は財産分与の対象となるか?

子ども名義の財産は夫婦名義の財産ではありませんが、その財産が純粋に子どもの財産で構成されているか夫婦の財産で構成されているかにより財産分与の対象となるかが異なります。
子ども名義の口座に子どもがもらったお小遣いやお年玉のみが貯めてある場合、これは夫婦共有財産ではないため財産分与の対象にはなりません。
他方で、子ども名義の口座であるものの将来の学費等のために夫婦が月々定額を入金しているという場合、夫婦の共有財産が子ども名義の口座に保管されているだけですので、夫婦共有財産として財産分与の対象となります。

なお、子ども名義の財産が夫婦共有財産であると判断される場合でも、夫婦で子ども名義の財産は財産分与の対象から外すという合意をすれば、子ども名義の財産は財産分与から除くことができます。
そのような形で除かれた財産は、子どもの親権者となる者が子どもために使うということを約束した上で保有することになることが多いです。

財産分与はいつまでに請求すべきか?

離婚条件を決める中で財産分与についても検討をすることが通常ですが、離婚のみ先行する場合には離婚時から2年を経過しないうちに財産分与の請求を行う必要があります。
それを超えてしまうと基本的には財産分与の請求ができなくなってしまうため注意が必要です。

まとめ

今回は専業主婦の妻が離婚する場合の財産分与をどのように考えるかについて解説をしてきました。
専業主婦であっても法的に財産分与を受け取ることは可能ですので、その点がネックとなり離婚に踏み出せないという方は以上を前提に再度考えてみてもよいと思います。
本来もらうべき財産分与を適切に実現するためには財産関係の調査が重要となりますので、離婚を切り出して警戒をされてしまう前に準備だけは進めておきましょう。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 吉田 竜二
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