ホームページの作成を制作会社に依頼した場合、著作権を持つのは誰なのか、著作権がないとどうなるのかについて考え、また、ホームページを持つ場合の注意点についても触れてみました。

1 ホームページの作成

ホームページは、他の広告媒体と比べ、作成・維持のコストが安く、また、その効果が圧倒的に高いので、一番効果的なマーケティングの手段と言ってよいと思います。以前は、自社でホームページを作ることもありましたが、最近は、ホームページのデザインも非常に重要になっているので、制作会社にホームページの作成を依頼することがほとんどではないかと思います。

2 ホームページの著作権

⑴ 著作物、著作権とは

著作物とは、思想または感情を創作的に表現したもので、文芸、学術、美術、音楽の範囲に属するものをいいますが(著作権法2条1項1号)、ホームページの中にある、写真、イラスト、文章、サイトの構成などは、多くの場合、思想または感情を創作的に表現したものとして著作物になります。
そして、この著作物を守る権利、複製を禁止する権利のことを著作権と言います。

⑵ 誰が著作権を持つのか。

著作物を創造した人が、著作者と言って、著作権を持つことになりますので(つまり著作権者になる)、ホームページの中にある写真については写真を撮影した人、イラストについてはイラストを描いた人、文章については文章を書いた人、サイトの構成については構成を考えた人が、著作権者になります。
また、著作者から著作権を譲り受ければ、譲り受けた人が著作権者になります。

制作会社にホームページの作成を依頼した場合、制作会社は、写真、イラストの作成者(著作者)からの著作権の譲渡を受けていることが多く、サイトの構成については自ら考えますから、制作会社が著作権者であるという場合が多いと思います。
文章については、ホームページの作成を依頼した依頼者が自分で作成する場合が多いと考えられるので、この場合は、文章の著作権者は依頼者になります。文章の作成まで制作会社に依頼していれば、文章についても、制作会社が著作権者になります。

ところで、ホームページの作成を制作会社に依頼した場合、依頼者は制作会社に対して制作料を支払っているのだから、ホームページ上の写真、イラスト、文章、サイトの構成などの著作権はすべて顧客にあると考えたくなりますが、法律上は、作成料の支払いに関わらず、著作権は制作会社にあります(文章を依頼者が作成した場合は、文章の著作権は依頼者にあることは前述したとおりです)。
なぜなら、上記のとおり、著作物を創造した人が著作者であり、著作権者になり、また、著作者から著作権の譲渡を受けた人が著作権者になるからです。

依頼者は制作会社会社に制作料を支払っているのだから、著作権の譲渡を受けたと言えないのかが問題になりますが、制作料は、ほとんどの場合、制作会社が著作権をもつ写真、イラスト、サイトの構成などの著作物を、顧客のホームページで使うことを許諾した対価にすぎず、それを超えて、著作権を顧客に譲渡したとは考えられません。

⑶ 著作権がないとどうなるか。

著作権がない場合でも、ホームページ上の写真、イラスト、サイトの構成などを、そのホームページで使っている場合は問題ないのですが、ホームページの一部を自社のパンフレットや会社報で使って取引先に配付したりすると、制作会社の著作権を侵害することになります。したがって、このようなことがないよう注意をする必要があります。

また、もっと実際的な例をあげると、制作会社のサービスが不十分、制作会社のホームページの修正料が高すぎるなどの理由で、ほかのホームページ制作会社に変えようとするときに、写真、イラスト、サイトの構成などのデータを引き渡してくれと制作会社に頼んでも拒否されます。この場合は、他の制作会社に一から作成してもらうしかありません。

なお、イラスト、写真、サイトの構成などの著作権を譲渡してもらうには、譲渡契約をすれば可能ですが、この契約をするためには、制作料のほかに、多額の著作権の譲渡料を要求されると思います。そうであれば、他の制作会社にする場合は、時代も変わっていることだから、一から作ればよいと考え、無理に著作権の譲渡をしてもらう必要はないように思います。

⑷ 文章について

ホームページの中心である文章については、依頼者が作成した方がよく、文章についてまで、丸投げの状態で制作会社に作ってもらうということはやめた方がよいと思います。

一つ目の理由としては、自社のことを一番よく知っているのは依頼者なのですから、文章は依頼者が作るべきで、制作会社に作ってもらったのでは、顧客に自社のことを強く訴求することができません。

二つ目の理由としては、文章を作ってもらうと、文章の著作権は制作会社にあることになりますから、依頼者が自分で文章を自由に変更することができなくなります。ホームページの内容は、時代によって、あるいは依頼者、顧客の状態によって常に変わっていくのですから、自由に変えることができないというのでは困ります。

⑸ 誰に著作権があるかの確認

制作会社との間で、ホームページ制作に関する契約書があれば、その契約書の中に、誰が著作権を持っているかの記載があります。
また、ホームページ制作の契約書を締結する前なら、著作権を依頼者にしてくれという交渉が可能かもしれません。
制作会社との間で契約書がない場合もありますが、この場合は、法律の原則どおり、制作会社が著作権を持つことになります。

3 ホームページを持つ場合の注意点

ここからは、著作権とは別の話になります。当事務所も、事務所サイト、企業法務サイト、労働サイト、相続サイトなど、いくつかのホームページを持っていますが、ホームページを持つ場合の注意点を述べてみたいと思います。

⑴ 専門知識がなくても、自社で更新できる形式のホームページを持つ。

例えば、ホームページの文章を変更する場合、ワードプレスやムーバブル・タイプを使ってホームページが作られていると、自社で簡単にホームページを変更することができます。ワードプレスやムーバブル・タイプは、CMS(コンテンツマネージメントシステム)というそうです。

CMSを導入していないホームページでは、一文を直すだけでも、制作会社に依頼しなければなりません。以前、当事務所は、CMSを導入していないホームページを持っていましたが、2〜3行直すだけでも、いちいち制作会社に依頼しなければならず、また、数千円の費用がかかっていました。ワードプレスを使っている今のホームページでは、2〜3行直すだけであれば、数分で、何の費用もかかりません。

⑵ 常にホームページのコンテンツを変更する。

経営環境は変わりますし、マーケティングも変わっていくのですから、ホームページの内容も常に変わっていくのは当然です。社内で、各分野についてのマーケティングの内容を決定し、それをホームページに反映させる必要があります。

⑶ コンサルタント契約

ホームページを持った場合、SEO対策(グーグルなどの検索エンジンで、あるキーワードを入力したときに上位に来る対策)を行わなければなりませんし、また、グーグル、ヤフー、ラインなどに広告を出すこともありますが、これらのためには、アクセス解析を行うことが必要です。
また、ホームページのコンテンツを変更するにしても、専門家でないと変更することが難しい箇所もあります。

したがって、ホームページを作ってくれた会社、あるいはSEO対策、ネット上の広告、アクセス解析の専門家とコンサルタント契約をすることが必要と思います。
ただ、その場合、契約書を交わしてよいと思いますが、思ったようなコンサルをしてくれるのか分からないのですから、「●ヶ月前の予告をもってコンサルタント契約を中途解約できる」という中途解約条項をいれた方がよいと思います。
また、コンサル料も、最初にまとまったお金を支払うのではなく、毎月、支払っていくようにするのがよいと思います。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
代表・弁護士 森田 茂夫
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