1 当事者の表示
 当事者が会社なら①、個人なら②のように表示しなければなりません。
  ① 大宮株式会社
    代表取締役 大宮太郎  ㊞
  ② 大宮太郎  ㊞
 それでは、③のように表示したらどうでしょうか。
  ③ 大宮株式会社
    大宮太郎  ㊞
 これでは当事者が、会社なのか個人なのか分かりません。土地の買主が③のような表示をした場合、売主はどちらに代金の請求をしたらよいか分からず、裁判で決着をつけなければならなくなります。また、例えば、個人には資産があるが、会社には資産がないという場合には、会社か個人かで大きな差が出てきてしまいます。

2 捨印
 契約書の上方の空欄に押す押印(捨印)は、契約の署名押印後、「あとで、契約当事者の一方に文章を直してもらってよい」という意思で押すものです。したがって、捨印を押すと、勝手に契約の条文を訂正されてしまい、あとで「この訂正は一方的なものだから無効だ」と主張することが難しくなってしまいます。

3 訂正の方法
 契約の条文について、例えば、2字消して2字つけ加えるなら、「削2字、加2字」と契約書の上部の空白部分に書いて、そこに判を押しておくのが正確です。訂正部分の上に判を押してもよいのですが、これだとその訂正印がどこまでをカバーするのかはっきりしません。判を押したところ、後に、判の周辺をさらに訂正されてしまっても、その訂正が有効なものかどうか争いが生じてしまいます。
 
4 「当事者双方誠意をもって協議する」 
 この条項には、法的にはほとんど意味がありません。ただ、何か起きたときに、「ここに誠意をもって協議するとなっているから、協議しよう」ということを言いやすいという程度の意味があるだけです。

5 契約書はどの程度保管しておくべきか
 契約が終了するまでの間(売買なら決済まで、賃貸借なら賃貸借終了まで)保管しておくのは当然として、例えば、相手方から債務不履行を理由に損害賠償請求されたという場合、権利行使ができるときから10年、権利行使ができることを知ったときから5年がたっていれば、時効によって消滅していますが、それ以前は損害賠償請求権が成り立つかどうかを争わなければなりません。したがって、各ケースに応じて、少なくても消滅時効期間が過ぎるまでは契約書を保管しておいた方がよく、できれば10年程度は保管しておいた方がよいと思います。